著者 :
50歳代。会社員。アメリカのカリフォルニア州での勤務を経て、現在は神奈川県在住。

私は仕事の関係で、カルフォルニア州のサンディエゴに4年間滞在しました。息子は幼稚園の途中から小学2年の終わりまでを向こうで過ごし、サッカーって楽しそうだなあという軽い気持ちからrecreation というプログラムに参加したら、いつの間にかcompetitive (競技)teamにも所属する事にもなりました。そこからサッカーにはまり、その後日本に帰任した後もどっぷりサッカー漬けの生活を送る事になることになります。今回は息子がサッカーを始めるきっかけになったアメリカのジュニアのサッカー環境の話を中心に書かせて頂きたいと思います。

はじまりはRecreationから

アメリカには子供が参加するrecreation プログラムがたくさんあります。まずはお試しでrecreationに参加し、子供が楽しくそのプログラムを受け、次のステップに行きたいと希望するならcompetitiveに行くなどして本格的にその競技に取り組むことになります。その為、recreationのハードルは低く、気軽に色々な競技に参加することができます。息子はLife saving やt-ball(ピッチャーのいない野球)に参加し、その後サッカーを選びました。サッカーを始める前は、「スポーツは何が向いているかね。野球かな、テニスかな?」といった会話を家族でしたのを覚えています。アメリカは競技的な活動になっても一つの事に専念するというよりは複数のスポーツをやる事を奨励する雰囲気があります。そのため、色んなスポーツを掛け持ちでやっている子供も多かったです。躊躇なく他のスポーツも味見している感じがありました。サッカーが終わったら次はアメフトやりたいという感じです。

Recreationは三か月のプログラムで費用は約200ドル。2歳から14歳まで参加可能。平日に1回から2回の練習プラス週末に試合がありました。息子のコーチは若いお兄さんコーチでしたが、competitive teamを有する団体から派遣されているコーチでした。個人のユニフォームも作成され、背中に名前も入ります。また、シーズン毎に記念写真(集合と個人)を取り、額縁に入れてくれるので、良い記念として今も飾ってあります。しばらく練習した後はトーナメントで試合が行われるので、子供達は勿論のこと応援している家族も熱が入ります。親同士も毎週顔を合わせるので自然と会話をするようになりました。

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[ サンディエゴ郊外のサッカーフィールド。子供たちのサッカーは、ずっとみていても飽きなかった ]

Recreationでは兎に角、楽しむ事ファーストでサッカーを通して純粋に楽しい経験をできた事が、サッカーをもっとやりたいという子供の思いに繋がったと思っています。Recreationのプログラムを2回終えて、息子がサッカーに自信を持ちはじめ、もっと高いレベルでサッカーをしたいと希望したタイミングでcompetitive team のtryoutがあり、合格して正式参加となりました。一学年を四段階のグレードに分けてチーム分けを行っており最初の年は三番目のチームに所属しました。Competitive teamのコーチは資格をもったコーチ経験の豊富なコーチで、練習は平日2回の練習と週末に試合が入りました。

ファーストネームで呼ぶコーチとの関係

Competitive teamでの練習は技術的な事よりも「スペースをよりワイドに使う」とか、サッカーのゲーム理解とか戦術的な内容が多かった気がします。単純にアメリカと日本のジュニアのサッカーレベルの比較は難しいですが、日本の方が足元の技術は高く、アメリカはどこかのんびりとしていて大味な気がします。但し、当時息子の学年で一番上手かった子はブンデスリーガのトップに練習参加しているのでレベルは低くないですし、これから伸びていくことでしょう。

アメリカでは上司でもファーストネームで呼びますが、これはジュニアのサッカーチームも同様で、チームメイトはもちろん、コーチともファーストネームで呼び合い、その関係はよりフラットに見えました。アメリカは学校でもそうでしたが、子供へのコミュニケーションとして、とにかくほめる、ポジティブな事を良く言われていました。良いプレーをした際には「Very good ○○」「Excellent!」という感じでとても大きな声で褒めてくれました。息子に再確認しましたが、怒られた記憶はないそうです。現地校の雰囲気もとても良かったらしく、いまだにあの時が一番学校に行くのが楽しかったと言っています。

Competitive team でも基本的に楽しくというスタンスは変わらないので、色んな行事がありました。年一回のteam banquetでは、ホテルの大部屋で一日かけてチームの方針の説明や優秀選手の表彰などを行いました。また、保護者主催のhome partyやteam mateのbirthday partyも頻繁にありました。一番記憶に残っているのは選手達がチーム毎に統一したコンセプトで仮装を行いゲームするという大会もしました。息子のチームは当時流行っていたIncredible Familyのコスチュームを揃えてプレイしました。大会運営はコーチ抜きで父兄が行った記憶があります。僕は経験者でもないのに普段偉そうにわかった風に話をしていたので、コーチをやらされる事になり、全く役立たずで、私の声掛けに子供達が困惑し、父兄達が苦笑していた顔が忘れません。

改めてコーチングって大変なんだなと思い知らされました。日本語でも難しいのに、伝えたい事をクリアに、しかも瞬間的に、ポジティブに英語で大きな声で指示を出す事はとても難しかったです。それ以来、瞬時にクリアな指示の出来るプレーヤーはすごいなと思ってしまいます。

カリフォルニアの天気はスポーツ向き

我々のいたカルフォルニアは気候が穏やかで圧倒的に晴れの日が多く、気温も年間を通じて20度くらいです。1月でも短パン半袖で応援に行ける日もありました。兎に角、屋外で運動するのに適した気温で、日本で日頃運動していなかった奥様達も競って色んなスポーツを始められていた記憶があります。私も定期的にランニングしていましたし、お友達の家族の皆さんとサッカーや野球、テニスにサーフィンと、兎に角週末は充実しておりました。最初は、現地の親達もファションで付けているのかと思っていたサングラスですが、日差しがとてもまぶしく、サングラスなしではまともに観戦できないので、必須アイテムでした。日差し対策でパラソルもマスト。ただ、最近の日本の夏レベルまでには気温は上がらず、湿度も高くなくていつも乾燥しているので、外には比較的長くいられる環境でした。ちなみにうちの犬は日本で腫瘍を患って痩せてしまったのですが、カルフォルニアに行ってからは庭に一日中放して日光浴をしていたおかげで、顔にあった出来物も消え、体重も戻り元気になりました。

練習や試合を行う会場、グラウンドはすべて天然芝でした。キチンと管理はされていないのでデコボコがあったりしますが、見た目は綺麗だし、安全だと思いました。日本に帰ってきて学校の校庭など土のグラウンドで試合した際は、息子は慣れない間はよく滑っていたのを覚えています。

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片道200キロの移動もザラ

これは子供の様々な活動に付き物で、日本の方も大変かもしれません。但し、アメリカでは移動は全て車で行い、チームの活動に関して、車での送り迎えはマストです。ちなみに学校や塾も全部車で送迎します。学校は歩いても行けない距離では無かったですが、近所の知り合いの子供も乗せて毎日妻か私が学校まで車で送っておりました。試合はカリフォルニア州レベルのカップ戦もたまに入りました。その場合、移動距離が長く、片道で2時間運転はザラです。アメリカで車で2時間も移動すると、約120マイル(約193キロ)ぐらいになります。アメリカは道路も広く、高速道路が整備されており、直線も長いので運転はそんなに大変ではないですが、眠くならない様に気をつける必要がありました。当然試合時間に合わせて、移動は早朝からで、帰りは夜になる時もあります。

また親もチーム運営に関して色々な役割を負担する事になり、僕は能力的に出来る事という事でユニフォーム洗濯係を担当しておりました。ゲーム終了と同時に僕が袋を持って「Jerseys please」と大きな声で叫びながら回収に回っておりました。

トップに上がれるところで、日本に帰国

結局、息子は二年間チームに在籍後、年末のtry outで一番上のチームに一段飛ばしで呼ばれました。技術力の高いメンバーと一緒にプレー出来るのを楽しみにしていたタイミングで私の日本への帰任が正式に決まってしまい、そのお話をお断りして日本に帰国しました。電話口でコーチに非常に残念がられたのを記憶しております。息子も帰国を告げた時には大泣きしていました。帰国後は自宅近くの少年団のサッカーチームに所属。私も何故かパパコーチとして参加。土のグラウンド、パパコーチ独特のコーチングスタイルとカルチャーショックを受けながらも、とても楽しく過ごしました。その後、Jリーグ下部組織のジュニアチームに所属、ジュニアユース、ユースとクラブチームでサッカーメインの生活を続けています。

小学生の頃から週末は早朝に起きて試合に行く事もあったり、毎日体幹トレーニングをしたりとそれなりに犠牲を伴いますが、今でもサッカーが楽しくて仕方がない様子です。息子にとって、そんなに夢中になって没頭できるサッカーとの出会いの場所となったアメリカのprogramに今でも感謝しています。親にとってもサッカーを通じてお友達になったパパ達とのLINEグループは息子が卒団後もむしろ活発に続いており、日常のストレス解消の場とさせて頂いております。先日も飲み会をして、パパ達と話をしていたのですが、チームの勝利に親も含めてみんなで喜ぶ、負けて落ち込む、息子がゴールやパスを決める等々、この歳になるとこんな楽しめるエンタテインメントは他には無いよねという話になりました。ユース卒団まで残り少ない期間ではありますが、引き続き楽しませてもらおうと思っております。

(2022年3月15日)